学校マーケティングという考え方・具体的手法

Webマーケティング 参照数: 7066

市場調査

調査によって問題点を探る

マーケティングを成功させるには、「顧客ニーズ」つまり生徒の求めるものが何であるかを把握していなければなりません。

進学予定の生徒はどんな希望や夢を抱いているのか、どんな学校に入りたいと思っているのか、どんな教育を受けたいのか、また生徒の進路に影響を与える親や教師の意識はどうか。今の子供たちの感覚や価値観はどうなのかという、欲求や、意識を探ります。

さらに学校の知名度はどの程度か、在校生は自分の学校にどんなイメージを抱いているのか、卒業生の評価はどうか、他校生徒や一般の人々の自校に抱いているイメージはどうかなど、学校に対する評価もぜひ知っておきたいことです。

このほか、文部省等国や自治体の指針や計画はもちろんのこと、他校の動向や進学率、学習軸の実態、自校生徒の学習塾利用の実態なども把握しておくことに越したことはありません。

これらの市場調査を基本に、顧客のニーズを満たす教育環境を作り上げ、提供することになります。


市場調査の主な内容を列記してみましょう。

主な市場調査項目

◎在校生が自校に抱いているイメージと評価
◎在校生の両親が自校に抱いているイメージと評価。
◎卒業生が自校に抱いているイメージと評価。
◎通学圏の就学予定者の自校に対する認知度。
◎通学圏の就学予定者の自校に対するイメージ。
◎在校生の学習塾の利用実態。
◎募集対象となる生徒の学校関係者の自校に対する評価。
◎上記生徒の両親の自校に対するイメージ。
◎在校生の学習塾の利用実態。
◎通学圏内の募集対象者の数。
◎通学圏内に住む生徒の他校への就学状況。
◎学習塾関係者の自校に対する評価。

これらのデータのすべてを一度に揃えるのは労力、費用、時間がかかり、きわめて困難です。しかし自校生徒や卒業生のデータなら、アンケート調査などによって簡単に行えます。

このとき注意すべきことは、ひいき目やお世辞抜きでアンケートに答えてもらうこと。ホンネで答えてもらわなければ意味がありません。

またこうした市場調査は、生徒募集の時点だけ行うものではありません。人々のニーズや社会的状況は絶えず変化していますから、折りをみては実施することが重要です。

商品企画

魅力ある教育環境をつくり直す

学校マーケティングでは、その学校が提供する教育環境を商品(=サービス)と考えます。商品計画とは顧客のニーズを満たす教育環境をイメージとして作り上げることです。ここで注意したいのは、学校と企業では、商品の概念が大きく異なることです。一般企業の販売する商品は、きわめて具体的で単純です。

これに対して 学校の教育環境という商品は、ハードからソフトまでさまざまな要素から構成され、人間の人格や心を扱うだけに、目に見えない要素も多く、きわめて漠然としています。しかも企業の商品は市場のニーズに合わせて新商品を次々に生み出すことができますが、教育環境はそうはいきません。創立以来の教育理念を簡単には変えらませんし、立地が悪いからといって移転することもできません。

このように教育という概念が商品として捕らえにくく扱いにくいため、マーケティングの手法がなかなか導入されにくかったのも事実です。
そこで商品としての教育環境を構成する要素を整理してみましょう。


学校=教育環境を構成する要素

ハード環境
◎交通・通学の利便
◎周辺環境
◎校内環境(敷地の広さ・建物・自然)
◎施設・設備の充実度
ソフト環境
◎教育理念
◎歴史・伝統
◎教育システム(カリキュラム等)
◎教育レベル(偏差値、進学実績等)
◎教育スタッフ(教師の質、陣容等)
◎校風・気質

これらの要素は、一般の商品に例えれば一種のスペック(仕様)のようなものです。スペックはデータであり、それ自体で人を引きつけ魅力を感じさせる商品としての価値はまだないといえます。

これらの要素から、市場調査結果の内容も考慮して、魅力ある学校=魅力ある教育環境イメージをつくり上げるのが、学校マーケティングの手法です。

教育環境づくりは学校経営の基本であり、また経営理念の具現化でもあり、長い時間をかけて地道に作り上げていくものです。従って私どもは教育環境づくりそのものに関わることはできません。

私どもがお手伝いするのは、その学校の持ち味である教育環境という複雑かつ漠然としたものを、マーケティングの手法で1つのコンセプトのもとにはっきりしたイメージに作り上げ、「売れる商品」に仕立て直すことです。

つまり、その個性や利点を見つけだし、体系化し、具体的に言葉に表わし、視覚化し、わかりやすく人々に伝えること。それが、学校マーケティングの戦略です。


販売戦略=コミュニケーション戦略

アピールや伝達方法を考える

商品計画によって新しくできた商品(教育環境)をどのように訴えかけたら効果的かを考えていきます。
ここでのコミュニケーションとは、訴求対象(ターゲット)に対してその存在を知らせ、学校の魅力を知らせ、入学へ導くためのすべての活動を言います。

コミュニケーションの方法には以下のようなものがありますが、前述の「商品化計画=学校イメージづくり」の方針に基づいて、以下の媒体を組み合わせて戦略を展開していきます。

1つの方法のみでは到達範囲も限られ、広告効果も充分発揮できません。いくつかの方法をミックスさせて展開することによって、相乗的な効果が生まれ、イメージの定着をより効果的に行えます。これをコミュニケーション・ミックスと言います。


主なコミュニケーションの方法

短期的コミュニケーション
マス広告
(新聞広告、雑誌広告、車内広告)
ポスター
入学案内
(パンフレット、リーフレット、ちらし、ダイレクトメール等)
長期的コミュニケーション
広報活動
(学校機関誌、学級便り、PTA機関誌、PRビデオ、インターネット・ホームページ、校史、記念誌)
看板
(屋外看板、駅校内看板)
学校行事、生徒活動
(文化祭・体育祭・コンサート・福祉活動、全国大会・国際大会出場)
口コミ


上記のアイテムには、毎年の生徒募集に合わせて行う短期的なものと、日常的に継続して行う長期的なものに分かれます。

また、媒体によって必ずしもターゲットが同じではなく、伝えるべき対象が異なることを意識して展開する必要があります。たとえば、学校案内パンフレットは進学希望の生徒やその両親が対象となりますが、新聞広告や車内広告、看板などは、不特定多数の人々も対象となります。

このように、長期的・短期的なアイテムを使い分け、ターゲットの違いを意識しながらコミュニケーションミックスの手法を駆使することによって、伝えたいことを、伝えたい人に、より確実に伝達でき、より多くの生徒に最終目的である入学応募を促すことができます。

コミュニケーション戦略の手法

イメージの方向性を定める

コミュニケーションミックスで最も重要なことは、新しい学校イメージづくりで設定した方向性を見失わないことです。

マス広告でも、学校案内パンフレットでも、看板でも、学校の機関誌でも、同じ一つのイメージで統一されていることです。大きな意味では、学校経営の基本方針が、内容は違っても、どのデザインやメッセージにもにじみ出ていること。わかりやすくいうと学校の個性が表れているということです。

例えば、学校案内で自由で明るい環境を学校のアピールポイントとしているのに、ポスターで「質実剛健」といったキャッチを使い伝統を強調した表現では、イメージが分散して意識に定着されません。

このように、コミュニケーション戦略を成功させるには、いくつかのなポイントがあります。

コミュニケーション戦略のポイント

ターゲットの明確化
コミュニケーションの相手は誰かということ。前述したように、対象は必ずしも生徒とは限りません。、生徒の進路決定に影響を与える両親であったり、教師であったり、不特定多数の大人であったり、さまざまです。使う媒体により、広告する時期によって、ターゲットを明確化しておく必要があります。
学校イメージの統一
学校のイメージを変えたい、他校との差別化が弱いのでイメージを作りたいというニーズ対して、ある一つのイメージをつくり上げ、すべてのコミュニケーションツールをこのイメージに集約させます。いわば新しい学校の顔づくりです。その手法として有効なのが、SI(スクールアイデンティティ)です。
表現コンセプトの統一
学校イメージが統一されたら、それをどう伝えるかを考え、デザインの方向性、メッセージの骨子を統一します。とくに視覚的なデザインの統一をはかる手法として有効なのがVI(ビジュアルアイデンティティ)です。

販売促進

実際にアピール・伝達する

学校のメッセージを実際に伝える作業です。宣伝・PRとも言います。

方法は、パンフレット、チラシ、看板、雑誌・新聞広告、ダイレクトメール、インターネット、学校説明会など様々な方法があり、時期と予算と誰を対象にするか等を考慮して最適な方法を選択します。

アフターケア

継続して改善、宣伝・PRを行う

生徒募集が終わった後、つまり生徒が学校に入学した後のフォローも重要です。

生徒のニーズ(希望や要求)に応えているかを常に検討し、よりよい環境になるように努める必要があります。卒業生もまた、大学の広報マンの役目を果たすことになるからです。

もちろん、募集時期に関わらず、宣伝・PRは、学校の認知度やイメージが広く定着するまで継続して行っていく必要があります。